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12年前

山梨県で生まれ

 

18年間過ごした地を

 

離れて、夢を叶える為に

 

東京へ来て


1年経過した時

 

それが私の12年前です。

 

 

 

見慣れない物に刺激を覚え

 

夜も寝ないで東京の街で

 

遊び回っていた時。

 

お金がない中で

 

同郷の友人3人で

 

渋谷のハチ公前を

 

ブラブラしていた時に

 

ある人から

 

写真に写る物を頂きました。

 

それから・・・

 

 

12年が経ち

 

家族を持ち

 

やりたい仕事も見つけて

 

日々楽しい時間を

 

過ごせている私は

 

12年前に渋谷でもらった物を

 

大切に飾っています・・・

 

 

 

これをくれたある人とは

 

やすだゆみさん

 

書家・路上詩人です。


やすださんは2000年に

 

勤めていた会社を辞めて

 

ストリートの書道パフォーマンスを

 

始めて、

 

現在は個展や書道教室などを行い

 

土日祝日には

 

高尾山、井之頭公園などで

 

書道パフォーマンスを

 

行っているそうです。

 

私とやすださんは、

 

12年前に

 

渋谷のハチ公前で出会いました。

 

 

友人3人でブラブラしている時に

 

地面にシートを広げて

 

正座して何か書いている人を

 

見かけ、そちらへ

 

僕たちは近づきました。

 

そこに立つ段ボールの看板に

 

筆で説明書きがありました。

 

 

「あなたの目を見て

 

インスピレーションで

 

字を書きます。」


なんとも面白そうだなと

 

僕たち3人は興味を持ちました。

 

しかし

 

お金のない僕たちは

 

料金の事が気になりました。

 

もう一度看板を見ると

 

「料金はあなたがお決めください。」

 

これは、

 

お金のない僕らには

 

もってこいだと思い

 

さっそく

 

お願いしました。

 

初めに渡された紙に

 

自分の名前を

 

漢字で書きます。

 

その後

 

やすださんと

 

正座して向き合い

 

目と目を合わせます。

 

5秒か10秒ほど

 

見つめ合うと

 

やすださんは

 

和紙にスラスラと

 

字を書き始めました。

 

ものの数分で完成。


 

 

「感動が竜弥を動かす

 

気持ち良いと感じた所で

 

生きて行こう。」

 

 

 

この書をもらった瞬間の

 

10代の僕は


「わーーー!!」

 

「すげーーーー!!」

 

「すげーーー!!」

 

「わーーーーー!!」

 

と言いながら

 

とにかく感動しました。

 

何だかよく分からないけど

 

3人の中で一番感動していた事を

 

今でも鮮明に覚えています。

 

「感動」

 

「気持ち良い」

 

「生きていこう」

 

という言葉を

 

僕は、とても気に入りました。

 

これは一生大切に

 

しようとも思いました。


 

 

そして、

 

料金の支払いです。

 

 

 

僕は、

 

友人2人が

 

さほど感動した様子は

 

見受けられなかったので

 

いくら払うのか

 

とても気になりました。

 

というのも

 

間違いなく僕が一番

 

感動したので

 

3人同じ料金を

 

支払う空気では

 

ないという事を

 

10代の僕は

 

感じ取ってしまったのです。

 

そして

 

お金がない僕ら3人は

 

互いに牽制しあい

 

なかなかお金を

 

だそうとしません。

 

睨み合いは

 

数分続きました。

 

そして

 

勇気を振り絞り

 

1人の友人が

 

手に何かを握り

 

やすださんへ

 

渡しました。

 

と、

 

すぐにもう一人の

 

友人がスッと

 

やすださんへ

 

何かを渡しました。

 

矢継ぎ早に

 

やすださんの手に

 

渡された物は・・・

 

 

 

 

100円が2つでした。

 

 

 

という事は

 

200円。

 

一人100円。

 


僕は迷いました。

 

感動をさほどしていない

 

友人が100円支払った物に

 

僕はいくら出せば

 

この空気は

 

沈静化するのかと・・・

 

いや、

 

友人は関係ない

 

僕は僕の思った金額を

 

出せば良いのだと。

 

感動したのだから

 

1000円くらいは

 

出すべきだろ!と

 

しかし、

 

1000円出せば

 

帰りの電車賃が無くなる。

 

これでは、

 

まずい。

 

と色々考えて

 


 

私は

 

やすださんへ

 

そっと手渡しました。

 

 

そこには

 

100円より

 

大きな形をした

 

硬貨がありました。

 

 

 

そう。

 

 

 

 

500円玉です。

 

 

 

お金のない中で

 

感動した物に出した

 

僕の最大限出せる金額、

 

それが500円でした。

 

「金額ではない

 

大切なのは


気持ちだよ。」

 

 

誰かに言われた様な

 

気がしました。

 

 

 

そんな

 

私も10代を懐かしいと

 

思える様な年齢になりました。

 

まだまだ過去を振り返って

 

懐かしむ年齢ではない

 

先を見て、

 

今、何をするべきか

 

考えて進め!

 

と誰かの声が聞こえます。

 

いやいや、

 

たまには昔の事を

 

思い出して

 

今の自分の立ち位置を

 

再確認する作業も

 

必要だ!

 

とまた他の誰かの声が聞こえます。

 

私が、行っている体操教室では

 

授業最後に必ず

 

参加してくれて子供たちに

 

ぶたの貯金箱へ

 

入れてもらっている物が

 

あります。

 

それは、

 

500円玉です。

 

これは、

 

体操教室を始める際に

 

子供たちにお金の価値を

 

実感して欲しいという

 

気持ちで決めた事です。

 

金額の設定なども

 

12年前の事を

 

気にしないで

 

決めた金額です。

 

 

物思いにふと、

 

やすださんの書を見ながら

 

過去を振り返って見たら

 

12年前の時も

 

500円だったんだーと

 

気付き

 

何だか、笑顔になりました。

 


人は、

 

前に進む事ばかりが良いと

 

思いがちです。

 

しかし、

 

人は生きてきた過去があります。

 

その過去を振り返って

 

笑顔になれなければ

 

いくら前に進んでも

 

苦しいばかりです。

 

だからこそ

 

今を

 

気持ち良いと感じた所で

 

生きていくことが

 

大切なんだと思います。

 

やすださんの書は

 

30代になった私の

 

思いを

 

今でもしっかり支えてくれます。

 

これからも大切にしよう。